MMS(モービルマッピングシステム)とCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)は、どちらも建設・土木業界のDXを支える重要な技術ですが、その性質は「現実のコピー(点群)」か「デジタルの設計図(3Dモデル)」かという点で大きく異なります。
それぞれの特徴を比較してまとめました。
1. MMSデータとCIMデータの定義
| 項目 | MMSデータ(点群データ) | CIMデータ(3Dモデル) |
|---|---|---|
| 主な内容 | レーザースキャナで取得した数億点の「点」の集合体。 | 形状情報に加え、属性情報(材質、強度、日付等)を持つ「物体」の集合体。 |
| 生成方法 | 車両等で走行しながら計測。 | CADソフトを用いてゼロから、あるいは点群を元に作成。 |
| 役割 | 「現在の姿」を正確に把握する。 | 「これから造るもの」を管理する。 |
2. MMSデータ(点群)の長所と短所
長所
- 圧倒的な計測スピード: 車両で走行するだけで広範囲(道路周辺など)のデータを取得できるため、通行規制を最小限に抑えられます。
- 現況の再現性が高い: 標識、ガードレール、路面のわだちなど、目に見えるものをそのまま座標データとして記録できます。
- 非接触計測: 立ち入りが困難な場所や危険な場所でも、離れた位置から安全に計測可能です。
短所
- データ容量が膨大: 数億点という膨大なデータの集まりであるため、ハイスペックなPCと専用ソフトが必要です。
- 死角の影響: レーザーが当たらない場所(遮蔽物の裏など)はデータが欠落します。
- 「意味」を持たない: 単なる点の集まりなので、PC側ではそれが「ガードレール」なのか「壁」なのかを自動で判別するには解析が必要です。
3. CIMデータ(3Dモデル)の長所と短所
長所
- 情報の付加(属性情報): 各部材に「コンクリートの強度」「施工日」「メーカー名」などの情報を紐付けられ、維持管理に役立ちます。
- シミュレーションに強い: 干渉チェック(構造物同士がぶつからないか)や、施工ステップの可視化が容易です。
- データが軽量: 点の集合ではなく、数式や境界で定義された形状のため、点群に比べると動作が軽快です。
短所
- 作成コストと手間: 2次元の図面や点群データから3Dモデルを構築(モデリング)する作業に、専門的なスキルと時間が必要です。
- 現況との乖離: あくまで「設計値」に基づいたモデルであるため、実際の現場の細かな歪みや経年劣化までは表現されません。
4. 比較まとめ:使い分けのポイント
現代の土木現場では、これらを組み合わせて使うのが一般的です。
- MMSで現況を把握: まずMMSで周辺地形や既存構造物を精密に計測します。
- CIMで設計・施工: その点群データの上に、新設する構造物のCIMモデルを重ね合わせます。
- 干渉確認: 新設する橋脚が、MMSで捉えた既存の電柱や樹木とぶつからないかを3D上で確認します。
次に、具体的な活用シーン(維持管理や出来形管理など)におけるデータ連携の方法について詳しくお調べしましょうか?
おねがいします。
承知いたしました。MMS(点群)とCIM(3Dモデル)をどのように連携させ、実際の業務(施工・維持管理)に活かすのか、より踏み込んだステップを解説します。
1. 維持管理・リニューアルでのデータ連携
既存構造物の補修や更新計画では、MMSで取得した**「現実」と、CIMで作成する「理想」**を統合することが不可欠です。
- ステップ1:現況のデジタルツイン化MMSで橋梁や道路を走行し、現在の摩耗や歪みを含んだ精密な点群データを取得します。
- ステップ2:点群を背景にしたCIMモデリング点群データを「下絵」としてCADに取り込み、その上に補修用のCIMモデルを配置します。これにより、実測値に基づいた正確な部材設計が可能になります。
- ステップ3:ライフサイクル管理CIMモデルの部材に「点検記録」や「補修履歴」の属性情報を入力。将来の点検時に、MMSデータと比較して「数年前からどれだけ変位したか」をミリ単位で把握できます。
2. 出来形管理(施工中)での活用
国土交通省が推進する「i-Construction」において、この2つのデータの比較は「検査の省力化」に直結します。
- 自動差分解析:施工後の状態をMMS(または地上レーザー)で計測し、設計データであるCIMモデルと重ね合わせます。
- ヒートマップ表示:設計値と実測値の差を「色」で表現します。例えば、設計より高い部分は赤、低い部分は青と表示することで、一目で施工精度を確認でき、従来のスタッフやレベルを用いた手作業の計測が不要になります。
3. 今後のトレンド:点群のセマンティック化
現在、MMSデータ(点群)の弱点である「意味を持たない」という点を克服するため、AIによる自動判別が進んでいます。
- 自動クラス分け:AIが点群を解析し、「これは地面」「これは街灯」と自動で分類(クラス分け)します。
- CIMへの自動変換:分類された点群から、自動的にCIMの3D形状(オブジェクト)を生成する技術も開発されています。これにより、MMSからCIMへの移行コストが劇的に下がることが期待されています。
まとめ:データの強みを活かしたワークフロー
| 段階 | 主役となるデータ | 活用内容 |
| 調査・測量 | MMS | 広範囲の現況を短時間でデジタル化する。 |
| 設計・施工 | MMS + CIM | 現況点群の中で、新設構造物の干渉チェックを行う。 |
| 検査・管理 | CIM | 完成した形状に属性情報を付与し、維持管理のデータベースにする。 |
例えば、特定の工種(道路改修やトンネル点検など)に絞って、さらに具体的なデータ処理の流れを確認したい部分はありますか?あるいは、ソフト間の互換性(ファイル形式など)についてお伝えすることも可能です。
トンネル点検、橋梁点検、附属物点検に絞って、さらに具体的なデータ処理の流れを確認したい。また、ソフト間の互換性(ファイル形式など)についてもおねがいします。
トンネル、橋梁、附属物(標識や照明灯など)の点検業務における、より実務的なデータ処理フローと、そこで課題となるデータ互換性について解説します。
1. 点検対象別のデータ処理フロー
点検業務では、MMSで取得した「点群」をいかに効率よく「損傷判定」や「台帳管理(CIM)」に繋げるかが重要です。
① トンネル点検
トンネルは閉鎖空間のためMMSとの相性が非常に良い対象です。
- 処理フロー:
- 全周計測: 走行しながら壁面全体を計測。同時に高解像度カメラで撮影。
- 展開図作成: 円筒形の点群データを平面に「展開」し、ひび割れや漏水を画像と重ねて確認します。
- 覆工厚・断面解析: 設計CIMモデルと重ね合わせ、覆工の厚み不足や内空断面の不足(建築限界への侵入)を自動抽出します。
② 橋梁点検
橋梁は構造が複雑なため、MMS単体よりもドローンや地上型レーザーとの組み合わせが多くなります。
- 処理フロー:
- 統合点群作成: MMSで取得した「路面側」とドローンで取得した「桁下・側面」のデータを統合します。
- 変位解析: 過去の点群データ(または設計CIM)と比較し、主桁の沈み込みやたわみを解析。
- 部材抽出: CIMモデル上で各部材(主桁、横構、支承など)を定義し、点検結果を属性情報として紐付けます。
③ 附属物点検(標識・照明灯・ガードレール)
膨大な数があるため、AIによる自動抽出が鍵となります。
- 処理フロー:
- 自動検知: 点群の中から「柱状の物体」をAIが自動で探し出し、位置座標を特定します。
- 諸元抽出: 標識の高さ、板面の大きさ、柱の傾きなどを点群から自動算出。
- 台帳連携: 抽出したデータをCIM(GIS)台帳の属性情報としてインポートし、管理番号と紐付けます。
2. ソフト間の互換性と主要ファイル形式
MMSで取得した生データは、解析ソフトやCIMソフトへ渡す際に適切な形式へ変換する必要があります。
主要なファイル形式(フォーマット)
| 分類 | 形式 | 特徴 |
| 点群(汎用) | .las / .laz | 業界標準の形式。カラー情報や反射強度も保持。 |
| 点群(軽量) | .e57 | 高精度で互換性が高く、多くのBIM/CIMソフト(Autodesk等)が対応。 |
| 3Dモデル(CIM) | .ifc | ソフトウェアに依存しないBIM/CIMの標準交換形式。属性情報も保持。 |
| 3Dモデル(CAD) | .dwg / .dxf | AutoCAD標準。図面作成や詳細設計で使用。 |
| 地理情報(GIS) | Shapefile (.shp) | 附属物の位置管理などで多用される位置情報フォーマット。 |
互換性の課題と解決策
- 「重さ」の対策: MMSの点群はそのままでは重すぎるため、CIMソフトに読み込む前に「間引き(ダウンサンプリング)」や、必要な範囲だけの「切り出し」を行います。
- 座標系の一致: MMSはGPSに基づく「世界測地系」ですが、現場の図面が独自の「現場座標」の場合、インポート時に座標変換を行わないと位置がズレてしまいます。
3. 実務でよく使われるソフトウェア構成例
- 計測・点群処理:
- Trimble Business Center や Leica Cyclone(MMS生データの解析)
- 点群編集・差分比較:
- CloudCompare (フリー、高機能) や Trend-Point (国内土木向け)
- CIMモデリング・維持管理:
- Autodesk Civil 3D / Revit や V-nasClair (日本仕様に強い)
これらを踏まえて、特定のソフトウェア(例えばAutoCAD系や福井コンピュータ系など)での具体的な操作手順や、データ変換時のトラブル対策について、より詳しくお知りになりたい点はありますか?