トピックス業界トレンド
あなたの知らない専門用語30
全体動向
認知度高い用語も表面的な理解か建設業界で飛び交っている横文字や略語、カタカナなどの専門用語。知っているようで知らない用語も少なくない。よく耳にする30語を独自調査でランキング。用語の意味とともに、用語にまつわる動向を解説する。(谷川博=日経クロステック)
建設関連分野で使われる機会が増えてきた専門用語30語について、本誌の読者を対象に、「意味を知っている」「聞いたことはある」「知らない」の3択で答えてもらった。このうち、「意味を知っている」と答えた割合を「認知度」と呼ぶ30語を認知度の高い順にランキングした(資料1)。各用語の右側に示した棒グラフの赤色の部分が認知度に当たる。各用語の意味も記した。認知度1位はSDGs~「意味を知っている」と答えた人が90%を超えた。次いで、DX, i-Construction、
資料1■専門30語の認知度ランキング
順位 用語 意味 認知度(%)
- 1 SDGs 持続可能な開発目標の略。国連サミットで採択し、2030年までの達成を目指す 91 45
- 2 Dx デジタルトランスフオ-メーションの略。デジタル技術で組織運営や企業文化などを変革 85 9 8
- 3 i-Construction ‘CT(情報通信技術)などを活用して、建設生産システム全体の生産性向上を図る 83 9 8
- 4 BIM/CIM 建設生産プ口セスをデジタル化。3次元データなどを共有して、事業全体の効率化を図る 81 13 6
- 5 5G 第5世代移動通信システム。大容量データの高速通信が可能。建機の遠隔操作などに活用 80 16 5
- 6 生成Al 利用者の指示に従って文章や画像などを自動で生み出す人工知能(AD 77 20 4
- 7 ド口ーン(レべル4) 小型無人機を操縦者の目の届かない市街地上空などで飛ばす「レべル4飛行」が可能に 71 25 4
- 8 グリーンインフラ 自然の多様な機能をインフラ整備や土地利用に生かし、持続可能な社会の実現を目指す 64 25 11
- 9 脱炭素コンクリ―ト 大気ゃエ場の排出ガスに含まれるニ酸化炭素(C02)を吸収・固定するコンクリ一ト 63 34 3
- 10 スマートシテイー I釘やAlなどを活用して、生活の利便性や快適性の向上を目指す都市・地域 61 27 12
- 11 メタバース 3次元の仮想空間。利用者が専用端末を使えば、仮想空間を疑似体験できる 49 44 7
- 12 GX グリ一ントランスフオ一メ一ションの略。クリーンエネルギ一主体の社会構造に変革 31 23 47
- 12 CCUS 建設キャリアアップシステムの略。就業履歴などを基に技能者の処遇改善を進める 31 22 48
- 14 デジタルッイン 構造物や交通、気象など現実世界の多様な情報をデジタル空間に再現する技術 30 36 34
- 15 ハイブリッドダム 天候に応じて貯水容量を柔軟に運用し、治水機能の強化と水力発電の促進を図るダム 29 43 28
- 16 Society5.0 狩猟、農耕、エ業、情報に次ぐ第5の社会。デジタル化などで経済発展と社会改善を両立 28 28 44
- 16 コンセッション 国や自治体が公共施設の所有権を保持したまま、運営権を民問事業者に売却する仕組み 28 28 44
- 18 ブルーカーボン 海藻ゃ海草など沿岸I海洋生態系が取り込んだ炭素。C02の吸収源対策として注目 26 36 38
- 19 ESG 環境、社会、企業統治の英語の頭文字を取った略語。企業経営に必要な視点 23 22 56
- 20 地域共生型再エネ 適切な環境配慮に加え、雇用や産業の創出など地域に貢献する再生可能エネルギー事業 22 42 36
- 21 ブ口ックチエーン ネットワ一ク上の複数のコンピュ一タ一でデータを分散管理して改ざんを防ぐ技術 21 37 41
- 22 スーノfーシテイー 内閣府提唱のスマ一トシテイーのー類型。デジタル化で自動運転や遠隔医療などを実現 18 32 50
- 23 インクル一シブ 「包摂的な」を意味する英語。誰もが違いを認め合い共生すること。SDGsの理念の象徴 15 25 60
- 24 群マネ 地域インフラ群再生戦略マネジメントの略。自治体間でインフラの一体的管理などを推進 12 17 71
- 25 xROAD 「ク口ス口一ド」と呼ばれる道路のデータプラットフオーム。国土交通省が活用を推進 10 25 65
- 26 ネイチャーポジテイブ 自然再興。生物多様性の損失を食い止め、回復へと転じさせる。30年までの実現を目指す 6 23 71
- 26 スコープ3 サプライチエーン全体の温暖化ガス(GHG)排出量のうち、自社分を除いたもの 6 23 72
- 28 0PERA 自律施工技術基盤の略。土木研究所が整備を進める研究開発用プラットフオ―ム 4 20 76
- 29 LLM 大規模言語モデルの略。生成Alのー種。自然な文章をっくるための基盤となる技術 3 29 69
- 29 0ECM 民間が生物多様性の保全を図っている「自然共生サイト」のうち、保護地域以外の区域 3 17 80
(出所:日経クロステック) ■意味を知っている ■聞いたことはある 知らない
調査概要 日経コンストラクションの読者を対象に2024年1 -3月にアンケートを実施。建設関連分野で使われる機会が増えてきた専門用語について、「意味を知っている」「聞いたことはある」「知らない」の3択で回答を求めた。そのうち、「意味を知っている」と答えた人の割合を「認知度」と定義した。認知度は小数点以下を四捨五入して整数値とした。調査総数は287件で、回答率は97.9%。回答者の勤務別の割合は、建設会社30.6%、建設コンサルタント会社39.9%、発注機関13.9%、その他15.7%だった
引M/CIM、 5Gの順。認知度はいずれも80%以上だ。
以下、生成Al,ドローン(レベル4), グリーンインフラ、脱炭素コンクリート、スマートシティーと続き、認知度はそれぞれ60 ~ 70%台だった。
これら上位10語を除くと、残り20語の認知度は軒並み50%を切った。中でも、下位5語の認知度の低さは目を引く。
同率最下位の0ECMとLLMは3%。次に低いOPERA は4%だ。その上に同率で続くスコープ3とネイチャーポジティブは6%だった。
こうした下位の用語はどれも、認知度の高い上位の用語に関係がある。にもかかわらず、認知度が格段に低いということは、関連する上位の用語の理解も表面的にとどまっている可能性がある。次ページからそれらの用語の意味と動向を解説する。
認知度85%のDX
道路DXの代表格区ROAD」は10%
DXとは、デジタルトランスフオーメーションの略。人工知能(Al)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」などのデジタル技術やビッグデータ(大量の情報)を駆使して、事業モデルや組織運営、企業文化などを変革する取り組みを指す。今回の調査では認知度が85%に上った。
DXの注目度が高まったのは、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降だ。「遠隔」や「非接触」といった言葉が流行。デジタル技術を活用して、人との接触を避ける技術やサービスを開発する動きが強まった。その意味では、わずか4年で社会に広く浸透した。
建設関連では、国土交通省が「インフラ分野のDX」を推進。ハザードマップ(水害リスク情報)の3次元表示や、河川利用手続きのオンライン24時間化、AT ‘c よる交通異常検知、地下空間の3次元化などを進める。
こうした取り組みに欠かせないのが、5G(第5世代移動通信システム)やメタバース、デジタルツイン、ブロックチェーン、xROAD (クロスロード)といった技術だ。ただ、5Gを除けば、他の用語の認知度は比較的低かった。メタバース49%、デジタルツイン30%、ブロックチェーン21%. xROAD10% といった具合だ。
大容量のデータの高速通信が可能な5Gは、遠隔操作による建機の自動化・自律化などに活用される。スマートフォンのサービスとしてもなじみが深いためか、認知度は80%だった。19年に実施した同様の調査では、認知度は61%。サービス開始前だった当時と比べると、認知度は20ポイント近く上昇した。
対照的に、大容量のデータにおける遠隔でのやり取りに必要なブロックチェーン(分散型台帳)は、さほど知られていない。ブロックチェーンは、ネットワーク上の複数のコンピューター間でデータを分散管理して、記録の改ざんを防ぐ。データの
信ぴょう性の確保が必要な建設現場の遠隔検査などには欠かせない技術だが、認知度は21%にとどまった。
伸び悩むメタバースの認知度さらに知られていないのが、xROAD と呼ばれる道路データプラットフォーム(資料1)~ DRM -DB
(デジタル道路地図データベース)などの地図情報に、道路構造物の諸元や点検結果を統合し、車の走行データもひも付ける。集めたビッグデータの一部は民間に開放し、維持管理などを効率化するアプリケーションの開発を促す。道路のDXの代表格
だが、認知度は10%と低かった。一方、構造物など現実世界の情報をデジタル空間に再現するデジタルツインは、19年の調査時(6%)と比べれば、認知度は上がったものの決して高い水準とはいえない。
メタバースも同様に、構造物などを3次元のデジタル空間で表現する技術だ。例えば、インフラ整備後の仮想空間(イメージ)をつくり、整備前に住民に疑似体験してもらえば、地域の合意形成を進めやすくなる。
メタバースはデジタルツインと似ているが、大まかにいえば、デジタルツインが実際の構造物などをデジタル空間に再現するのに対し、メタバースは現実世界にない構造物など認知度83%のi-Construction をデジタル空間に創出する。
米フエイスブックが21年に社名をメタに変更し、本格参入を表明したことで注目が集まった。ただ、メタが事業を収益化できていないこともあって、当時よりも注目度が下がっている。今回の調査でメタバースの認知度が伸び悩んだ背景には、そうした事情もあるのかもしれない。
認知度83%のi-Constructionをデジタル空間に創出する。米フエイスブックが21年に社名をメタに変更し、本格参入を表明した
ことで注目が集まった。ただ、メタが事業を収益化できていないこともあって、当時よりも注目度が下がっ ている。今回の調査でメタバースの認知度が伸び悩んだ背景には、そうした事情もあるのかもしれない。
i-Con2.0の要の0PERAは4%
トConstruction (アイ・コンストラクション)とは、にT(情報通信技術)を活用して、調査から維持管理・更新までの建設システム全体の生産性向上を図る取り組み。今回の調査では認知度が83%に上った。国土交通省は、2025年までの建設現場の生産性2割向上を目標に、16年度から多様な施策を展開している。
24年4月には、取り組みを深化さ せる現場の省人化対策与Construction 2.0」を公表。「施工」「データ連係」「施工管理」の3つのテーマで、現場のオートメーション化を進め、40年度までに現場の生産性を1.5倍に拡大し、3割以上の省人化を達成する目標を掲げた(資料1)。
例えば「施工」では、人工知能(Al)が作成した施工計画に基づいて、1人のオペレーターが複数の建機を操作できるようにする。「データ連係」では、建設生産プロセス全体をデジタル化・3次元化して、不要な調査や紙での書類作成を省く。「施工管理」では、プレキャスト部材の活用や監督・検査の遠隔化を進める。
i-Constructionの認知度は頭打ちか
i-Construction は、国交省が注力してきた政策であるだけに、土木関係者の間でかなり定着している。過去に実施した同様の調査では、国交省が取り組みを始めた16年に24%だった認知度は、3年後の19年に83%に上昇。今回も同じ割合を維持している(資料2)~ただ見方を変えれば、認知度が頭打ちになったともいえる。新型コロナウイルスの感染が拡大した20年以降、国交省はデジタルトランスフオーメーション(DX)関連の施策を推進。i-Constructionの影が薄く
資料1U i-Con2.0は3つの柱で構成
1.施工のオートメーション化
・自動施工に向けた環境整備(安全ルール策定、0PERA)
・遠隔施工技術の普及促進
・施工データ集約・活用のための基盤整備
・海上工事における取り組み
」 cT施工の原則化(2025年度)
2 データ連係のオートメーション化
(デジタル化・ペーパレス化)
・3次元モデルの標準化(試行)
・後工程へのデータ活用
・デジタルツイン
・施工データの活用の効率化
・データ活用による書類の削減
3 施工管理のオートメーション化
(リモート化・オフサイト化)
・監督検査のデジタル化・リモート化(遠隔臨場、
デジタルデータを活用した配筋確認)
・100Gbpsネットワーク整備
・ロボットによるリモート検査
・プレキャストの活用
2024年度のトConstru面on2.0の主な取り組み
(出所:国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成)
なった。前述の2.0には、巻き返しを図る狙いもあると見られる。
2.0の柱の1つ、「施工のオートメーション化」では、自動施工に向けた環境整備に取り組む。代表的な技術が0PERA (オペラ)と呼ばれる「自律施工技術基盤」だ(資料3)。自動施工・遠隔施工に関するオープンな研究開発用プラットフォームで、土木研究所が整備を進めている。24年度には、異なるメーカーの建設機械を同じプログラムで動かす共通制御信号の策定に向けた共同研究を行う。ただ、施工のオートメーション 化の要となる0PERA の認知度は今回の調査でわずか4 %i-Construction の認知度と比べると、その低さが目に付く。ドローンの認知度27ポイント低下ドローンは、i-Construction 導入時からの主要技術で、測量分野などで活用されてきた。当初から認知度は高く、16年94%. 19年98%だった。今回の調査では、ドローン(レベル4)として内容を限定したところ、認知度が71%と5年前よりも27ポイント下がった。
レベル4とは、操縦者の目の届かない市街地上空など有人地帯(第三者上空)で飛ばす「レベル4飛行」を指す。航空法改正を受け、国交省が22年12月に解禁した。建設関連では資機材の運搬や災害対応などへの活用が見込まれる(資料4)~
今回までの3回の調査を見ると、ドローンは知っていても、レベル4飛行を理解していない人が約3割いる。0PERA の認知度とも考え合わせると、i-Construction の「総論」の理解度は高いものの、「各論」への関心や認識が低い傾向がうかがえる。
認知度77%の生成Al基盤技術のLLMは3%にとどまる
生成Alとは、利用者の指示(プロンプト)に従って文章や画像、音声、音楽、動画などを短時間に自動で生み出す人工知能(AT)。インターネット上の文章や画像など大量のデータを学習して、多様なコンテンツを出力する。今回の調査では認知度が77%に上った。
生成ATへの注目が高まったのは、米オープンATが2022年11月に対話型ATrChat(チャット)GPT」を公開した後だ。自然な文章を速く出力できることに加え、無料で使いやすいことから、公開後2カ月で利用者が1億人を突破した。
今回の調査を行ったのは24年1~3 月。生成ATは、ChatGPT の公開後わずか1年余りで認知度が8割近くに達した。これまで3回にわたって認知度を調査した用語の中では、異例の速さで浸透している。
LLMを「知らない」が69%
主要な建設会社と建設コンサルタント会社の計40社に対して、23年10月に実施したアンケートでは、生成ATの業務利用について、回答企業31社の48%が「(従業員に)認めている」と回答。29%が「(対象者や業務内容を)限定して認めている」と答えた。両方を合わせて8割近くが生成ATの活用に積極的な姿勢を示した (資料1)。
生成ATのサービスへの注目が集まる一方、その仕組みを理解している人は少ない。代表例がLLMだ。今回の調査では、認知度はわずか3%「知らない」と答えた人が69%を占めた。
LLMは大規模言語モデルの略。言語モデルは、文章などテキストデータを大量に学習し、ある単語に続く可能性が高い単語を予測して、その確率をはじき出す(資料2)この処理能力を大規模化したのがLLMだ。文章や画像など多様なデータを扱う生成ATのうち、テキスト分野に特化したものを指す。生成ATの一種に位置付けられる。ChatGPTはこの基盤技術を使って、利用者の指示や質問に自然な受け答えができるようにしたサービスだ。認知度61%のスマ トシテイ政府提唱のSociety5.0は28%スマートシティーとは、防犯や防災、交通、インフラ管理などににT(情報通信技術)や人工知能(AT)などを活用して、生活の利便陛や快適性の向上を図る都市・地域。今回の調査では認知度が61%だった。
トョタ自動車が静岡県裾野市で建設を進めている実験都市「ウーブン・シティ」はその1つ(資料1)。広大な工場跡地に、自動運転車の専用道路などを設け、モビリティーや物流などの実証実験を行いながら、約2000人が暮らす街をつくる計画だ。
一方、スマートシティーと関連する概念はさほど知られていない。例えば、狩猟、農耕、工業、情報に続く、第5の社会を指すSociety5.O (ソサエテイ- 5.0)。認知度は28%にとどまった。政府が第5期科学技術基本計画(2016 ~20年度)で、目指すべき未来社会として提唱した。その先行的な実現の場として位置付けるのが、スマートシティーだ。 認知度91%のSDGs
中核的概念のインクル
SDGsとは、持続可能な開発目標の略。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられた。
都市や気候変動、経済成長など17の
資料1■普遍性や包摂性などを重視
普遍性 先進国を含め、全ての国が行動包摂性 人間の安全保障の理念を反映し、
「誰一人取り残さない」
参画型 全てのステ一クホルダ一が役割を
統合性 社会・経済・環境に統合的に取り組む
透明性 定期的にフオ口ーアップ
SDGsのゴール(目標)で重視する点
(出所:外務省の資料を基に日経クロステックが作成)
ゴール(目標)と169のターゲット
(具体的な取り組み)で構成。全加盟国が取り組む目標として、30年までの達成を目指している。今回の調査では認知度が91%と最も高かった。一方、SDGsの関連用語であるインクルーシブは、認知度が15%にとどまった。インクルーシブは、「包摂的な」を意味する英語。外務省によると、SDGsは「誰一人取り残さない」という理念を掲げ、17のゴールで「普遍性」「包摂性」「参画型」「統合性」「透明性」を重視する(資料1)。
シブは15%
「誰一人取り残さない」という理念は、その包摂性に当たる。このため、 インクルーシブこそSDGsの中核的な概念と見る向きもある。
日本では、政府がSDGs実施指針に基づき、30年までの目標達成に向けた優先課題を設定。「持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備」「省・再生可能ェネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会」「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」など8つの分野で、SDGs ‘、の取り組みを進めている。
認知度31%のGX
施策のIついイブリツドダム」は29%GXとは、グリーントランスフオーメーションの略。化石燃料を中心とした経済・社会構造をクリーンエネルギー主体に変革する取り組みだ。
岸田文雄首相が掲げる経済政策「新しい資本主義」の柱の1つ。2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定。同年5月にGX推進法を成立させ、脱炭素と経済成長の両立を目指して10年間で総額150兆円を超える投資を行う体制を整えた。
インフラ分野では例えば、カーボンニユートラルポート(CNP)の形 資料1●国土交通省が「OX建機」として認定した竹内 作所の電動バックホー「TB20eJ (写真:日経クロステック)
成を推進し、液化天然ガス(LNG)や水素の供給に役立つ設備、脱炭素型 資料2■発電・治水容量を増強できる
の機械を導入する。また、道路に太 [従来のダム活用] [ハイブリッド容量]
陽光発電施設を設けたり、「道の駅」 洪水調節容量に電気自動車(EV)の充電施設や水 発電容量Up素ステーションを設置したりする。 雨が予想されない場合貯水位を上昇
国土交通省は23年10月、GX建機 洪水前には貯水位を
「ハイブリッド容量」のイメージ。治水と水力発電の両立を認定制度の運用も開始。二酸化炭素低下治水性能Up
目的に設定し、天候に応じて貯水容量を柔軟に運用する。
(出所:国土交通省の資料を(Co2)の排出量が少ない電動式の油 発電容量 基に日経クロステックが作成)
圧ショベルとホイールローダーを対象とし、同年12月に認定の第1弾を公表した(資料1)
治水と水力発電を両立
今回の調査では、GXの認知度は31%だった。時の政権の看板政策にしては認知度が低いと見る向きもあるかもしれない。関連用語についても同様だ。例えば、GX基本方針に基づく施策の1つ、ハイブリッドダム(資料2)。認知度は29%だった。
ハイブリッドダムとは、治水機能の強化と水力発電の促進を両立させるダムを指す。天候に応じて貯水容量を柔軟に運用する。洪水前は気象予測に基づく事前放流で水位を下げ、雨が予想されない場合は水位を上げて効率的に発電する。既存ダムの放Iili口の増設や堤体のかさ上げなどで治水機能を高めるとともに、発電施設の新増設などで発電容量を増やす。国交省は22年度に6施設で試行し、23年度に対象を72施設に広げた。
認知度64%のグリーンインフラ
新潮流ネイチャグリーンインフラとは、自然環境の多様な機能を活用したインフラ整備や土地利用などを指し、持続可能な国土・都市・地域づくりを目指す取り組みだ。今回の調査では認知度が64%だった。2019年に実施した同様の調査では認知度は33%。この5年ボジティブは6%間で認知度がほぼ倍増した。
一方、これまで紹介してきた他の用語と同じように、最近の動きにやや疎い傾向も見られる。ネイチャーポジティブもその1つ(資料1)。認知度は6%に過ぎなかった。
ネイチャーポジティブは、日本語では「自然再興」。22年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP1S) で示された考え方で、生物多様陛の損失に歯止めをかけ、回復へと転じさせる取り組みを指す。
政府は23年3月、ネイチャーポジティブの30年の実現に向けて生物多様陛国家戦略を策定。国土交通省は23年9月、グリーンインフラ推進戦略を4年ぶりに改定し、新潮流のネイチャーポジティブを「グリーンインフラのビルトイン(実装)」に欠かせない視点と位置付けた。
2050年将来像
自然と共生する
豊かな社会の実現
0ECM の認知度はわずか3%
さらに知られていないのがOECMだ。今回の調査では認知度がわずか3%だった。0ECMとは、企業緑地や里地里山など民間の取り組みで生物多様性の保全が図られている「自然共生サイト」のうち、自然保護を目的とした国立公園など保護地域に含まれない区域を指す。環境省が認定し、国際データベースに登録する。
生物多様性国家戦略では、ネイチャーポジティブの実現に向け、30年までに陸域と海域の面積の各30%以上を保全する30by30 (サーティ・バイ・サーティ)の達成を求めている(資料2)。 OECM は30by30に欠かせない取り組みの1つだ。
認知度63%の脱炭素コンクリ ト
建設会社の関心事「スコ プ3」は6%脱炭素コンクリートとは、大気や工場の排ガスに含まれる二酸化炭素(C02)を吸収・固定するコンクリート。2050年までに温暖化ガス(GHG)排出量を実質ゼロにするという政府の目標の達成には欠かせない技術だ。
環境省は、22年度の国内のGHG 排出・吸収量の1つとして、脱炭素コンクリートによる吸収量(C02固定量)を計約17トンと算定。24年4月、
世界で初めて国連にその吸収量を報告したと発表した。
対象は、鹿島などが開発したC02 – suにOM(シーオーツースイコム、
製造時C02固定型コンクリート)、大成建設T-eConcrete/CarbonーRecycle (ティー・イーコンクリート/カーボンリサイクル、C02由来材料使用型コンクリート)と大林組クリーンクリートN(同)、清水建設SUSMにs-C(サスミックス・シー、
バイオ炭使用型コンクリート)だ。
このように、実用化段階に入った脱炭素コンクリートは急増している(資料1)。建設会社だけでなく、発注者が脱炭素コンクリートを活用して、社会にアピールする動きも見られる。日本コンクリート工学会も、脱炭素コンクリートの日本産業規格(JIS)化の検討を進めている。
今や、コンクリートはC02を固定化する材料という認識が半ば当たり前となった。今回の調査で脱炭素コンクリートの認知度が63%と比較的 高かったのは、そうした時代背景を反映している。
鹿島はスコープ3の削減に活用ただ、関連用語については、あまり知られていない。スコープ3はその1つ。認知度は6%に過ぎなかった。スコープ3とは、サプライチェーン(供給網)全体のGHG排出量のうち、自社分を除いたもの。GHG排出量の算定・報告に関する国際的な基準「GHGプロトコル」によるC02排出量の分類の1つだ。
GHGプロトコルでは、燃半H吏用や製品製造などに伴う自社の直接排出量をスコープ1、他社が供給する電気や熱などの使用による自社の間接排出量をスコープ2、それ以外の間接排出量をスコープ3と定義。これら3つを合わせたサプライチェーン全体の排出量を把握するよう企業に求めている(資料2)
建設会社でいえば、スコープ3の対象は、コンクリートなど建設資材の製造や資機材の建設現場までの輸送、完成した構造物の利用・解体などに伴って発生するCo2の排出量だ。そして、建設会社のCo声F出量では、このスコープ3が圧倒的に多い。国際的な非政府組織(NGO)の英CDPの調査によると、日本の主要な建設会社の場合、スコープ3がCo2排出量の96%を占める。
例えば、鹿島は24年5月、長期環境目標「鹿島環境ビジョン2050p1us] を公表。50年度にサプライチェーン全体でC02排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。同社のC0声F出量全体の97%を占めるスコープ3については、26年度までに21年度比で10%、 30年度までに同25%を削減し、50年度に実質ゼロにする。
鹿島はスコープ3をサプライチェーンの上流(建材製造時)と下流(建物運用時)に分類。上流の排出量の削減では、まずは自社努力が可能な範囲に注力するとして、C02-SUにOMなどの使用を増やしていく方針を示した。
認知度31%のccus
英語略称だと認知度が低下
CCus(シーシーユーエス)とは、建設キャリアアップシステムの英語表記、Construction Career UpSystem の略。建設技能者の就業履歴や社会保険加入状況などの情報を蓄積して、その処遇改善に活用する(資料1)。国土交通省が2019年度に本格運用を開始。22年度に技能者の登録数が100万人を突破した。国交省はさらなる普及に向け、22年度にCCUSの取り組み状況に応じて建設会社の経営事項審査(経審)に加点する制度を導入。23年度に技能者の能力レベル別の年収の目安を提示し、建設会社に賃金の引き上げを求めた。さらに、監理技術者の専任義務緩和(複数現場の兼任化)に活用する方針を示し、建設会社にCCUS利用を促している。
このように国交省が普及に力を入れるCCUSだが、今回の調査では認知度が31%にとどまった。19年に実施した同様の調査では、認知度は44%だった。
国交省の取り組みとは裏腹に、この5年間で認知度が10ポイント余り下がったことになる。
もっとも、19年の調査では、CCUSではなく、建設キャリアアップシステムとして尋ねている。そのことが影響しているのかもしれない。
認知度28%のコンセッション
伸び悩みで過去最低に
コンセッションとは、国や自治体が公共施設の所有権を保持したまま、運営権を民間事業者に売却する仕組みを指す。政府は、空港や上下水道、道路、スポーツ施設、公営水力発電、工業用水道などを重点分野に位置付け、普及を推進してきた。
ただ、空港以外の施設では、もくろみ通り導入が進んでいない分野も少なくない。
今回の調査では、認知度が28%と伸び悩んだ。2016年と19年の同様の調査では、認知度がそれぞれ29%と37%だった(資料1)。今回はこれまでの調査の中で認知度が最も低かった。
最近では、内閣府のPPP/PFI推進アクションプランで推進分野として位置付けた「スモールコンセッション」が注目されている。自治体が取得・所有する空き家など小規模な既存施設を対象とした事業だ。
認知度12%の群マネ
新政策のためか「知らない」が71%
群マネとは、国土交通省が進める地域インフラ群再生戦略マネジメントの略。自治体単独の対応に限界がある状況を踏まえ、近接する自治体同士がインフラの一体的な管理などに取り組む(資料1)。
国交省の有識者会議が2022年12月に示した提言に基づく。今回の調査では、認知度が12%だった。有識者会議の提言から時間がさほどたっておらず、自治体の動きも本格化していないからか、「知らない」と答えた人が71%に上った。
二酸化炭素の何かかと思っていたら…
建設キャリアップシステム(Construction Career Up System, 略称CCUS)のことだった。
CCUS